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欲望という名の電車 テネシー・ウィリアムズ‥

欲望という名の電車 テネシー・ウィリアムズ

名家の娘ブランチが、都会に住む労働者階級に嫁いだ妹の家に住まわせてもらいにやってくる所から物語は始まる。

ブランチは没落貴族であり、夫に死なれ、身も心もボロボロになってやってくる。しかしかつてのプライドだけは持っている。

妹の旦那スタンリーは、たくましく新しい時代を生きている。

この物語は、ブランチ(古い時代の人)と妹ステラとその夫スタンリー(新しい時代の人)の対比で描かれている。

この対比は、きっといつの時代でも起こりうるし、ドラマチックに物語を演出している。

例えば日本では幕末。

徳川の時代の古い武士は、明治政府の新しい人々に破れ、滅び去って行く。

特に近年、時代の流れがはやいし、多かれ少なかれ旧時代と新時代の対比の出来事は、我々の日常でも続く。

僕の経験した最初の世界の変転は、やはりバブル崩壊である。

大学生だった僕は、急に学歴神話が崩れ就職氷河期がやってきた。

バブルで甘い汁を吸ったが落ちぶれた人と、バブル崩壊後の人‥‥ここにはブランチとスタンリーの関係性が存在する。

業界単位でもブランチとスタンリーの関係はある。

紙媒体が終わりを告げ、Webの時代になった。

雑誌編集者だった妻と、IT企業のこれからの若い人。

そして元芸人で今落語家の僕の周りにも。

テレビに出たい出たいと思い続け、わずかに出たお笑い番組の事を誇りに思って生きている僕と、今の新しい時代の若手落語家。

誰しもが、ブランチとスタンリーの関係性を持っていると思う。